「クオリティ国家という戦略 大前研一」を読みました。

スイス、シンガポール、フィンランド、スウェーデンなどの人口300~1,000万人、一人あたりGDPが400万円以上で世界の繁栄を取り込むのが上手い国家をクオリティ国家と呼び、日本も道州制を導入することで同じくらいの規模感の独立採算の組織をつくっていくべきという内容でした。

スイス、シンガポール、台湾、デンマークなどがどのようにクオリティ国家として、経済を伸ばしているかが事例をまじえて解説されています。

なぜクオリティ国家が独自の発展をとげる方向に向かったのかという以下の共通点が日本にはないので、制度を変えることで対応できるようにしようと書かれています。

・自国市場が小さく、世界市場で稼ぐしかなかった
・世界市場で、低コストで攻めてくるボリューム国家には、イノベーションやブランドなど高付加価値産業で対抗するしかなかった
・自国に、資源や強い企業がなければ、外から企業、技術、資金を呼び込むしかなかった
・国の規模が小さいために、産業構造を大胆にシフトさせることが可能であった

母国のマーケットが大きいことで、いざとなれば撤退すればいいという甘えが出て、腰掛け的な発想で事業をするために進出時に本気になれないというような説明があったのですが、それはまさにその通りだと感じます。日本もなんだかんだで日本人にとっては圧倒的に稼ぎやすい環境ですし市場規模もかなり大きいので、国内だけに注力して競合に勝てるよう動くほうが得なのではないかと考える経営者が多くなっているのでしょう。海外の状況が見えていない、見えていても国内のほうの重要性が高く、海外事業はとるに足らないことのように感じられて注力する気にならないというのは、リバース・イノベーションという書籍でも取り上げられていた問題です。リバース・イノベーションでは新興国の企業によるイノベーションが、先進国企業がニーズをつかみそこねている間に世界中を席巻するという説明がされていました。

人口減少にしたがって日本の市場がなくなるのが確実であろう業界はたくさんありますが、そういった業界の企業は特に早めに海外に出ていき、製造拠点としてではなく現地の内需に向けて商売をしないと潰れると思います。

道州制により各道のトップに大きな権限を与えて、独自の意思決定できるようにし、それぞれの地域の強みを活かして世界と渡り合えるようにしようという主張は、こう変わったら面白そうだと思う反面、具体的に何をどう世界に発信していくという点では思いつきのような戦術しか触れられていないのが残念でした。仮に地方トップの権限がより強くなり、そのポジションに優秀な人が就いたとしても成功するイメージがわきませんでした。ご本人は地域ごとにいろいろと考えていて、紙面が足りないだけなんでしょうけども。

日本はBRICSなどの大規模国家と、クオリティ国家の間の中途半端なポジションになってしまっているというのはその通りなので、道州制のぜひはともかくとして、どういう方向性で国を進めていくのかを決められるよう、組織のあり方を変えていく必要はありますね。いまのシンガポールの国家戦略は「エンターテイメント」だとこの本では説明されているのですが、これくらい極端に絞り込んでかつわかりやすい方針を決めるくらいのほうが、物事が進んでいくのかもしれません。

クオリティ国家という戦略 これが日本の生きる道 クオリティ国家という戦略 これが日本の生きる道
大前研一

小学館
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以下メモです。

私はシンガポールを「事業戦略型」国家と呼んでいる。(中略)かつては10年ごとに、最近はほぼ5年ごとに国家戦略をモデルチェンジしてきている。世界のどの国よりも早く、”国家の定義”を変え続けているのだ。
P82

興味深いのは、シンガポールでは街の人に聞いても、タクシーの運転手に聞いても、「現在のシンガポールの国家戦略はこれです。」とはっきり言えることだ。それほど国家戦略が明確に国民の意識の中に刷り込まれているわけである。
P83

シンガポールは世界中の制度の矛盾やシステム上の弱点を調査・研究し、それらを巧みに利用しながら、国家手動でアービトラージ(さや取り)をして稼いでいるのだ。
P98

クオリティ企業は、海外資産比率、海外売上比率、海外従業員比率及びそれらを単純平均した海外比率が高い。
P129

香港とマカオ
スイスとフランスやドイツ
デンマークとスウェーデン
シアトルとバンクーバー
など、隣接する国、地域で国境をまたいだ繁栄の方程式を描く事例が増えてきている