Month4月 2013

常識に縛られていて踏み出せない、気づいていない収益モデルを発見する「俺のイタリアン、俺のフレンチ」

ブックオフの創業者の坂本孝さんによる「俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方」を読みました。

以前から俺のイタリアン、俺のフレンチなどのお店が繁盛しているという話は聞いていて、かつブックオフの創業者が経営しているというのも知っていたので、どういうお店なのか気になってました。たまたま本屋で見かけたので手にとってみました。

本書によると、俺のイタリアン、俺のフレンチのモデルは回転率を上げることで食材の原価を高くしてでも採算があうようにしているのが特徴だそうです。他の飲食店の経営者からすると儲かるはずがないと思うくらいの原価を設定し、通常平均20%、高くても30%以下におさえる原価率を、フードだけなら60%以上、ドリンクとあわせて50%程度にするという主旨のようです。回転率が肝なので立ち飲み形式となっていて、毎日3回転はさせています。
常識を疑って収支をシミュレーションしてみて、それを実行に移して成功しています。16坪の店舗で月商1,900万を超えているとのことで、すごい効率のよい店舗運営をされています。

ミシュランで星をとっているようなレストランで働いていたシェフを次々と採用していき、料理のクオリティを保ったまま、価格も劇的に下げて、消費者にとって魅力的な金額感となっています。客単価は3,000~5,000円程度のようです。「高級食材をじゃぶじゃぶ使う」ということが強調されていて、料理へのクオリティへの意識が伝わってきます。

競争優位性の記述についてですが、収益モデルの差だけでなく、オペレーションが洗練されていって少人数でもお店を回せるようになっている効率の良さも他社との差となっているとのことです。

69歳という年齢にして、新しいビジネスをたちあげて、真剣に取り組んでいるのは見習いたいです。現在の飲食の業態以外にいままで社員10名以上にして手がけてきたビジネスは合計12個あるそうで、中古ピアノの販売とブックオフ以外はすべて失敗して、2勝10敗だそうです。失敗しても新しいことを生み出し続けることが成功の秘訣なのだと思います。古本屋に続いて飲食店で業界を変革し、さらには2度めの上場まで予定しているということですごい経営者です。

あと読んでみて思ったのが、現場を大切にしているなということです。ご自身でも週3回お店に立っていると書かれています。
また、業態開発にあたって参考にした飲食店の名前がすべて記載されていて、それぞれのお店のどういうところがよいと考えて取り入れていったのかが都度説明されています。

お店はいまだに大人気のようで、毎月1日に翌月分の予約受付を開始するものの、その日のうちにすぐに埋まってしまうくらいの人気ぶりだそうです。

俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方 俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方
坂本 孝

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いつまで取り組むビジネスを細かく把握すべきなのか考えるきっかけになった本「起業家 藤田晋」

サイバーエージェント社長の藤田さんの本「起業家」を読みました。

ユーザー中心の考え方に変わっていく過程や、人事のやり方を変更することで社内の雰囲気がどう変わったかなどが描かれていて面白かったです。アメーバに注力することを決めたものの、それからしばらくは現場任せにしていてまったく上手くいかなかったので、自分でテコ入れするべく、2年以内に黒字にならなかったら社長を辞めるという宣言までしてアメーバだけに集中していく様子がまとめられています。広告代理店部門が花型で、そのほかのサービスは傍流だという雰囲気があった状態から、社長自らが陣頭指揮をとることで少しずつ環境を変えていくまでの苦労がわかります。

この規模の会社ですら、社長が先頭にたってサイト内の変更や企画案の承認、ユーザビリティーに関する微修正などの指示をすべきという判断をして、それに徹底して取り組んでいるのが印象的でした。

いままで20名くらいはサイバーエージェントの方と会ってきましたが、優秀な人が多いという印象があります。採用や、文化や雰囲気のつくりかたが上手いのだと思います。この本でもその方法論の一端が垣間見えました。

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藤田 晋

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同世代のインターネット関連の会社の経営者と話すときに、いつまで現場について社内で最も詳しくあり続けるべきかという話題が何度も出てます。現場の細かい部分についてまで社長が最も詳しい状態というのは、その事業分野で優れた人材の採用が上手くいってなかったり、権限移譲ができていないということで、会社を大きくしていくうえでは間違った状態なのではないかという話です。

人によって大きく意見がわかれますし、取り組んでいる事業とその周辺環境によって最適な状態は違うので特に正解はないことはお互いわかっていながらも複数の経営者が同じ話題を振ってくるということは、みんな一度は考えることなのだと思います。
個人的にはウェブサービスにおいてはトップが細かいところまで把握して口出しをするのはアリだとは思います。1つのサービスに特化していて、会社全体の業績がそれに左右される場合は特にそうです。

僕は検索エンジンから集客するというSEOというビジネスをしているのですが、これについては誰にも負けないように細かいところまで詳しい状態をできるだけ保ちたいと考えていて、毎晩関連したブログやサイトを巡回して黙々と読んでいたりします。ただ、こうした取り組みが正しいかというとそうでもなくて、同業の社長の中にはあまり専門知識がない人もたまにいますが、そういう人でも自分の会社よりずっと大きく事業を展開している人は何人もいます。
そうした例に触れると時間をさくべきところを間違えているのかもしれないという考えになることがあります。将来的には蓄積したノウハウが役にたって事業でも追い抜けると考え学習を続けていてやめるつもりはないのですが、手段が目的化している面が一部あることも確かなので気をつけるようにします。また、組織の規模が大きくなってきたときにはいつか切り替えるべきタイミングがくるとは考えています。

幸いなことにSEOというジャンルにおいてはGoogleの仕組みが複雑化しているおかげで、真面目にノウハウを蓄積してきた会社や人が伸びそうな流れになってきてます。世の中の大きな流れや他社の動向で環境が決まることのほうが多く、自社でどうにかできる要素は少ないですが、突き詰めていく分野の寿命やトレンドはとても重要な要素です。会社としても個人としてもずっと同じような事業をしているので、いつまでも同じことにしがみついている状態に危機感を持ち、現状維持したくなる気持ちを捨てて早めに思い切って事業を転換しないと会社がなくなりそうです。

インターネットの会社はそこそこ優れた商品やサービスを出しても、それが新しく大きな市場を作りだして日本一、世界一になるくらいの規模でないと、どこかのタイミングでやることをまったく別のものに切り替えないといけないとやっていけなくなると思うのですが、自分自身の思考も組織の力学としても現状維持を無意識に選びたがるものでしょうから、意識して変えていくよう心がけます。

真似から始めて独自ビジネスに昇華していくプロセスをまとめた 「模倣の経営学 井上達彦」

模倣の経営学―偉大なる会社はマネから生まれる―を読みました。

さまざまなケーススタディを例にビジネスにおいて模倣して成功する方法について説明されています。KUMONを例として、表面だけ見ると簡単に真似できそうなのに実は同じオペレーションを維持するのがすごく難しいビジネスが長期間優位性を保てるというのが説明されていて参考になりました。

競争の少ない市場で勝負するためにも、できるだけ他がやっていないビジネスをするのはビジネスの基本だと思うのですが、この本では他の企業の真似から入ってオリジナリティを足すほうが効率的な場合もあるということを説明しています。

模倣の対象を社内と社外、肯定的に参考にするか否定的に参考にするかで以下の4タイプに分けています。

社外、肯定的 単純模倣

社外でかつ肯定的に捉えるのは単純模倣と分類しています。
トヨタがスーパーマーケットの品出しを模倣してジャストインタイムの仕組みを作り上げていった例や、スターバックスやドトールがどうヨーロッパのカフェを参考にしていたかが紹介されています。

サウスウエストというLCC(格安航空会社)を模倣することで、ライアンエアやエアアジアといった会社が派生していきLCCのマーケットができていったというケースもありました。

社外 否定的 反面教師

他社の失敗を参考にして、同じ轍を踏まないようにしようという分類です。
他社にできていないことを探すときに有効な方法です。

例としてマイクロファイナンスのグラミン銀行がとりあげられていました。通常の金融機関は企業などの信頼性が高く、貸出額の大きくなるところだけを対象として、かつ担保をとって融資するという仕組みでしたが、グラミン銀行はそれを反面教師として、貧しいを個人を対象として小さな金額を担保なしで貸し出すことで新しいマーケットを創出したという話です。

社内 肯定的 横展開

社内で成功している方法を参考にして、他の事業にも同様に導入していくことを指しています。
ジョンソンアンドジョンソンは包帯などの使い捨ての医療関連商品で成功した会社ですが、社内のある技術を活用することで、いままで長期間使用し続けることが前提だったコンタクトレンズを使い捨てで販売することに成功し、大きなシェアを獲得しました。

社内 否定的 自己否定

社内で過去に失敗した例を参考にして、それを繰り返さないようにすることです。
有名な書籍と映画「マネーボール」の題材となったメジャーリーグのオークランドアスレチックスが紹介されています。お金がない球団においてどう選手を獲得すれば勝てるチームになるかということを考えたジェネラルマネージャーが、いままでのスカウトの経験を元にした選手の選択方法を否定して、セイバーメトリクスという数字を根拠とした手法に切り替えることで勝率をあげていきます。いままでのやり方と大きく違うことをするので、組織内から反発も発生するのですが、それらを抑えこんで改革を進めていきます。

守・破・離の考え方も参考になりました。
まずは愚直なまでに真似をして模倣元のやり方を守り、そのあとに自社の状況やニーズにあわせてそれを破り、独自性を追加して元の状態から離れていくというものです。

事例集として面白い本でした。著者の井上達彦さんの論文が以下にまとまっているようですので、あわせてどうぞ。
研究活動 : 早稲田大学 アジア・サービス・ビジネス研究所

模倣の経営学―偉大なる会社はマネから生まれる― 模倣の経営学―偉大なる会社はマネから生まれる―
井上達彦

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本書は書籍を参考に事例を集めているのですが、名著がたくさん紹介されています。
僕も何冊か読んだことがある本が紹介されていたのですが、以下は特におすすめです。

マネー・ボール (RHブックス・プラス) マネー・ボール (RHブックス・プラス)
マイケル・ルイス,中山 宥

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小倉昌男 経営学 小倉昌男 経営学
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世界経済の歴史から将来を予測「なぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか」

なぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか」を読みました。今年読んだ中でいまのところ最も面白い本でした。

世界経済の歴史から将来を予測するのに役にたつ本だと思いました。世界中を対象にして海外で仕事している方はぜひ読んでみてください。

労働コストが高い国では、労働を削減するための技術導入のインセンティブが生まれて生産性が向上して経済成長していき、一方で労働コストが低い国では技術発展のインセンティブが生まれず、現状維持をしてしまい、機械化・自動化により生産効率の差が大きくなりすぎた時点でその産業は駆逐されるというような話がまとまっています。

経済発展をするための主に各国の政府がとってきた方法として以下がまとめられていました。

国内の地域間の関税を撤廃し、交通インフラを整備することで国内市場の統一する
普通教育を一般化し、識字率や計算能力を高める
自国産業保護のための関税や制度を用意する
産業に必要なだけの資金が行き渡るようにするための金融インフラを整備する

日本、ソ連、台湾、韓国などの西欧に追いつくことができた国がなぜ急激なペースで経済発展できたのかがまとまっているのも参考になりました。
国が主導で計画経済を行う必要があるという話です。将来の需給の状況を予測して、現状では必要とされていない産業を複数同時に先に創りあげなくてはならないという主張です。例として、効率のよい製鉄所を作るためには国内での需要をある程度押し上げて1つ1つの製鉄所の生産量をある程度の規模にまでする必要があり、そのためには自動車や建築などの産業を同時並行で発展させていかなければならないというのが取り上げられていました。

労働コストの向上によって機械化のインセンティブが高まり、結果として労働生産性があがっていくという話は、モノを運ぶのが現在よりも大変だった時代により強く現れた現象だと思います。また物流コストが生産コストとくらべて無視出来るほど小さくなった産業や、そもそも物流が必要ない産業には当てはまらないかもしれません。国内で機械化して生産性を上げなくても、近隣国でより安いところから輸入すればよいためです。その結果として先進国においては技術革新よりも、国外への産業の流出、空洞化が多く起こっているのが現状だと思います。

いまは世界中の技術力の差が以前よりも小さくなっているので、どの国の企業でも最新技術を駆使した機械と、安価な労働コストでよりよいほうを選択できるようになっていますが、機械化よりも安価な労働コストを選ぶほうが合理的だと思います。人間にできない作業であれば別ですが、ほとんどの製品は機械で自動化するよりも、海外に工場つくってそこで製造して運んできたほうが経済的だからです。

物流の発展や関税障壁の撤廃による貿易のコスト減や、モノを取り扱わないビジネスの増加によって、本書で説明されているような国や場所ごとの比較優位による産業の住み分けがどう変わっていくのかが、今後の世界経済の発展のしかたを予測するうえで鍵になるような気がします。

なぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか なぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか
ロバート・C・アレン,グローバル経済史研究会

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企業が国家を超越して労働者は2極化する動きを解説 【書評】企業が「帝国化」する 松井博

企業が「帝国化」する アップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔を読んでみました。複数のブログやサイトで推薦されているのを見たのがきっかけです。
すごく参考になる面白い本だったのでおすすめです。

アップル、マクドナルド、食肉業界大手や石油メジャーなどの、いわゆる世界を変えるほどの力を持っている大企業の動きなどを解説しつつ、企業がどう国家に影響をおよぼし、また国家の枠組みを超えて活動しているかが説明されています。

帝国企業の特徴として以下があげられています。

1.得意分野への集中
2.小さな本社機能
3.世界中から「仕組みが創れる」人材を獲得
4.本社で「仕組み」を創り、それを世界中に展開
5.最適な土地で最適な業務を遂行
P43

とにかく1つの分野にぶれずにフォーカスし、本社部門のスタッフの人数は少ないままで、世界中に同じ仕組みを広げるという成功パターンが例示されています。

国を超えてビジネスをしている帝国化した企業にとっては、仕組み化を突き詰めて以下に安い金額で外注していくかが利益を上げるために必要になってきます。アップルがフォックスコンに製造を委託しているのを例にあげ、どう効率化が進められていくのかを明らかにしています。
アップルの上級幹部の給料はフォックスコンの労働者の2,000倍以上だそうですが、仕組みを創る側と、つくられた仕組みの中で働く代替可能な仕事だけをする人で2極化していくという点は、他の書籍でも多数指摘されている議論なのですが、この傾向が強くなっていくのは明らかですね。そのような2極化が推し進められる環境の中で、どういったスキルをつければ生き残っていけるのかも提案してくれています。

石油メジャーがアフリカの国家にどういう影響を与えているか、ロビー活動でどう政府を操作するか、広報活動でどう世論に訴えかけて自社に有利な方向に誘導するかといった大企業ならではの動き方が説明されていたのも参考になりました。

企業が国家を意識しなくなっていくのは間違いないということを再認識した本でした。大企業でなく、中小企業ですら国家をこえて最適な場所でビジネスをするようになっていくのでしょうね。
ある程度まで規模が大きくなってきて母国のマーケットをそれなりに獲得してしまい、もう海外に出ないとそれ以上伸びる余地がないという状態や、コスト構造的に海外に出ないと生き残れないという状況においては、国を意識してビジネスしていたら会社が止まってしまいます。

企業が「帝国化」する アップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔 (アスキー新書) 企業が「帝国化」する アップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔 (アスキー新書)
松井博

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教育のオンライン化で世界で戦うためのスキルがどう変わるか クーリエ・ジャポン5月号

「クーリエ・ジャポン5月号」読みました。毎月面白い情報が掲載されているのですが、今月号も参考になりました。

16歳のギリシャ人がスタンフォードの授業をオンラインで受け、教授へ質問して回答をもらっているというエピソードとともに紹介されていた「コーセラ」というオンライン講座の仕組みを解説した記事が特に興味深かったです。教育のオンライン化でグローバルで活躍するために有効なスキルセットが変わっていきそうです。

世界中のどこにいる人でも有名大学の講義をオンラインで受けられるようになるという話と並んで、欧米大学が推されているのに違和感ありました。
受講生同士のコミュニケーション含めて本当に教育が均質化されるのであれば伸びているエリアに行ったほうがいいのではないかと思うからです。近い将来にアメリカ一極集中の時代じゃなくなるのか、それとも学問・ビジネスの両面でしばらくアメリカは世界をリードし続けるのか、どちらで予想しているかで留学や就職先選ぶようになりそうです。

そのうち世界中のエリートとのつながりという留学の大きなメリットとされている点も、オンラインで代替できるようになりそうです。
専門分野に特化して能動的につくったオンラインでのつながりと、たまたま同じクラスだった大学の同期だったら、前者のほうが価値がある気がします。

COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2013年 05月号 [雑誌] COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2013年 05月号 [雑誌]

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