日本のインバウンド観光施策の問題点を各種調査データを元に指摘して、どのような取り組みをすれば外国人観光客が日本により訪問してくれるようになるかがまとめられています。

著者のデービッド・アトキンソンさんは日本在住20年以上で、有名な投資銀行のゴールドマンサックスでパートナーまで務めたアナリストの方です。2009年に京都で創立から300年以上の国宝、重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社に入社し、現在は取締役として経営をされています。

元アナリストということで、様々な調査のデータを用いて日本の観光産業の問題点や伸びしろを指摘しています。

経済効果に寄与する要因は何なのかということを分析して、それを解決するためのいくつかの案を提示しています。たとえば日本に来た時に1人あたりの消費金額が高い国はどこで、それらの国の人に日本に訪れてもらうためにはどういう施策をすればいいかといったことです。また、訪日観光客の客単価をいかに上げるかの案もいくつか提示しています。

あと、訪日外国人旅行にアピールしたいポイントとして日本人が挙げている点が間違っていると痛烈に批判しています。たとえば、治安がいい、マナーが良い、交通機関が正確といった点が外国人観光客に注目してもらえる点と考えている日本人が多いという調査があるそうなのですが、これらを理由にして日本に観光に来る人はいないと断じています。
たしかに少し考えれば治安やマナーが良いという理由で観光地を選ぶ人はいないということがわかります。あまりにも治安が悪ければ行くのを避けるかもしれませんが、ある程度治安が保たれていて最低限の基準さえ満たしていれば、海外旅行で選ぶ国を考えるときに治安を主な要因として選ぶ人はいないでしょう。

デービッド・アトキンソン 新・観光立国論 デービッド・アトキンソン 新・観光立国論
デービッド アトキンソン

東洋経済新報社
売り上げランキング : 218

Amazonで詳しく見る

最近インバウンド観光に関連した仕事をよくするようになってきたので、参考になるところの多い本でした。また、他のインバウンド観光についての本ではアジアの観光客を主なターゲットとして集客、おもてなしをする方法がまとめてあることが多いのですが、「新・観光立国論」では、著者がイギリス人ということもあってか、より所得水準の高い層である欧米系の観光客を対象にするという観点で説明されていたのが新鮮でした。